『スパイダー』

なかちょんさんの投稿

可愛い君が好きな物ちょっと老いぼれてるピアノ

 さっき誘拐してきた少女は何も知らないで、僕の部屋の古いピアノに夢中だ。

寂しい僕は地下室の隅っこでうずくまるスパイダー

孤独な僕は、自分の部屋で獲物が来るのを待っている蜘蛛だ。そして、少女を誘拐しては暴行している。

洗い立てのブラウスが今筋書き通りに汚されてゆく

僕の思い通りに、少女を暴行していく。

だからもっと遠くまで君を奪って逃げる

僕はこの衝動を止めることができない。だから、どこまでも少女を連れて逃げつづける。

ラララ 千の夜を飛び越えて走り続ける

これからもずっとやめない。

可愛い君を捕まえたとっておきの嘘振りまいて

またいつものように少女を言いくるめて、自分の車に乗せた。

寂しい僕に火をつけて知らんぷりハート形のライター

助手席の君は、僕の欲望に火をつけたことも知らないで、無邪気に笑っている。

黄金色の坂道で加速したら二度と戻れないから

夕暮れの坂道で車を加速させた。これで、もう君は二度と家には帰れないよ。

だからもっと遠くまで君を奪って逃げる

このスリルを忘れることはできない。だから、また少女を誘拐する。

ラララ 千の夜を飛び越えて走り続ける

ずっとこうして過ごしたい。

だからもっと遠くまで君を奪って逃げる

ずっとずっと逃げ続けてやる。

力尽きた時はその時で笑い飛ばしてよ

もしも捕まってしまったら、そのときは笑い飛ばすがいいさ。


「洗い立てのブラウスが今筋書き通りに汚されてゆく」の部分を見て、これは恋愛の歌ではないと確信します。
恋人同士のsexを「ブラウスを汚す」と表現するのは通常ありえないと思います。
しかも、「筋書き通りに」ですから、主人公の独りよがりな暴行とするほうが自然です。
また、「ブラウス」という言葉から私は少女を連想します。
これには個人差があると思いますが、私はブラウスというと少女の着る物というイメージがあります。
つまり、「洗い立てのブラウス」は、純真無垢な少女の暗喩ではないでしょうか。
 そして、題名にもなっている「スパイダー」は、蜘蛛のことです。
巣を張って獲物が来るのをじっと待っている様子は、誘拐犯とぴたりと一致します。
 また、第二連では、「可愛い君を捕まえたとっておきの嘘振りまいて」「黄金色の坂道」=夕暮れ時という部分が、いかにも誘拐の描写としてしっくりきます。

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